ありのままの田舎暮らし
第9話 「生命の水」の巻
東京にいた頃からさんざん悩まされていたのが手荒れや肌荒れでした。
ジャンクフード漬けだった高校生の頃、顔にひどいアトピーが出て、さらに20代後半頃からは原因不明の手荒れに苦しみました。手のひらがかゆくてたまらず、リバウンドを気にしながらステロイド剤を塗り、木綿の手袋をはめて寝ますが、夜中にかゆくてかきむしることもありました。アレルギーのような水虫のような、カユカユ、ヒリヒリ、ジクジクの三拍子です。職場の同僚の女性も同じ症状を示しており、彼女は職場でも手袋をはめていました。
この頃から添加物入りのものや肉食をほとんど絶ち、一日一食は玄米菜食にしましたが、症状は治まりませんでした。
福島に移住して最初の年の暮れからパン焼きを本格的に始めることになりました。最初の2年くらいは無我夢中でしたが、3年目頃から手を酷使するあまり手荒れが再発し始めました。パン生地に含まれる塩分が手のひらにしみて、ヒリヒリ、かゆくてたまらず皮膚科も訪ねましたがひどくなるばかり。このままではパン作りができなくなるのでは、と心配したほどです。水を触るのも辛くて、夫に洗い物をほとんどお願いしていました。
一度お客さんからの注文が作れずお詫びしたところ、その方の知り合いのパン屋さんもひどい手荒れからパン屋を辞めたという話でした。
そんなトラブルを抱え、4年目に2km先の那倉に引越し、約1年が過ぎた頃です。気がつくとそれまで水仕事の際は必ず使っていたゴム手袋をはめずに洗い物ができるようになっていました。(あれ程悩まされていたのに不思議...。何故だろう?)
その後ずっと再発していません。すっかり治ってしまったようです。食生活、環境、生活のリズム、特に変わったことはありません。強いて言えば、「水」くらいでしょうか。
それまでずっと水道水だったのが、那倉に来て初めて山の水を利用する生活に変わったのです。もしかして手荒れは水道水の塩素が原因だったのではないだろうかと、直感的に思いました。
思い当たる節では、花瓶に挿した花が、不気味にも1ヶ月以上も生き延びるのです。水は1〜2回変えるだけです。この水には、何か不思議なパワーがあるように思えてきました。
雨水が土壌に染み込み、ゆっくり流れていくうちに無数の微生物や有機物を含みます。この山の栄養分をたっぷり含んだ水が、切花を1ヶ月以上も生かしているのではないでしょうか。それを飲んでいる私達も健康で長生きできるかも知れません。
野菜だけでスープを作るとき、多くの種類を入れるほど美味しいスープが出来ますが、山の養分をたっぷり含んだ有機水と何だか似ています。
豊富な山の栄養を運びながら土壌を潤し、全ての生命を育む水。豊かな山が豊かな海を育むとはこのことです。
自然ってすごいな、偉大だなと思います。
和田 央子
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