ありのままの田舎暮らし
第10話 土地はタダで手に入れようの巻
-- 田舎暮らしの落とし穴、第2弾 --
さて今回は、無駄な出費を抑えることをテーマに考えてみたいと思います。
都会を脱出したい、そう願っている人であれば書店に溢れる田舎暮らしの本を何冊も読んで夢を膨らませているのではないでしょうか。私も買いました読みました。
こうした書籍の多くが田舎暮らしの落とし穴として注意を喚起していることに「ぼったくり」があります。
都会だろうが田舎だろうが、日本全国良心的な人間もいれば性質の悪い人間もいます。ちょっと油断するとだまされてしまうのは全国共通ですが、特にいなかへの移住者が認識しなければならないことは、移住者は金を騙し取ろうとする連中の格好のターゲットになっているということでしょう。都会でお年寄りが振り込め詐欺のターゲットになっているのとまったく同じに。
移住する際には土地や住む家を確保しなければなりません。新築するにしても、あるいは家を借りるにしても補修が必要となる場合が多くなりますし、また、この他にも仕事や農作業用に適当な建物を用意したり、庭や道を整備するなど住環境を整えるために業者に依頼しなければならないことが多々発生します。
業者と交渉し、工事を依頼し、かかった費用を支払う際、その請求が適正な価格なのかあるいは必要以上に高額なのか、実はその線引きは意外に難しいのですが、いずれにしても後から後悔しないために事前の知識と対策が求められているのは間違いありません。
以下、私の実際の体験を踏まえ、注意点をまとめてみましょう。
-- どんなことでも見積もりは不可欠 --
まず、言うまでも無いことですが、いきなり知らない建設業者に話を持ちかけず、信頼のおける人に良心的な大工さんを紹介してもらうこと、さらにやることやらないことを明確にしてきちんとした見積もりを取ることは当然です。
見積もりを取り、
1. 依頼したこと以外の作業が入っていたり、余分な請求が入っていないか。
2. 1つの案件が人件費、出張料、取付代、作業料、技術料などさまざまな名目で幾重にも請求されていないか。
などを判断し、納得できれば契約、さもなくば発注しないということになります。
移住した当初、妻がパン屋をやることを希望し、水道のパイプに次亜塩素酸ソーダ(塩素)を注入するポンプを取り付ける必要が発生しました。業者に見積もりを依頼したところ40万弱とのこと。ポンプ自体は安いのですが、新たな受水層と別途くみ上げ用のポンプも必要でそのための工事費が含まれるとの事でした。
高すぎると思った私たちは発注せずに自分達でポンプを取り寄せ、付けてみました。新たな受水槽もくみ上げポンプもありませんが、ポンプは支障なく作動しています。かかった費用はポンプ代1万円のみでした。
次は見積もりを取らなかった例です。
やはり移住した当初のことです。職場として使用する中古物件を購入しその補修が必要となりました。
紹介された大工さんがお金をかけないようさまざまな案を示しその結果として提示された額もけっして高いものではなく安心することができ発注したのですが、実はここに落とし穴がありました。
大工さんが出した見積もりはあくまで建物の補修であって、電気、水道、左官の工事は入っていなかった、すなわち必要な工事に関わる多くの部分で見積もりはとっていなかったということです。
大工さんが連れてくる水道屋、電気工事業者、左官屋、さらに手伝いに呼ばれた大工が良心的だとは限りません。かえって大工さんが良心的なだけに「この人が連れてくるのだから大丈夫だろう」と油断が生じます。
結果として工事終了後、業者言いなりの請求額を支払うはめになるのですが、こうした場合自分が想定する以上の高額な請求に驚くことばかりで「安くやってくれた」と思うことはまずありません。
-- 頼んでないことはやらないで --
見積もりを取るのは実は前段階、注意しなければならないのは見積もり後、工事が始まってからです。
頼んでいないことを「ここちょっとやっといてやるよ」と笑顔で言いながら勝手にやってしまったり、さらには後から「あそこ直しておいてやったから」と言われたりすることがありました。
「それは必要ない、やらなくてよい」と明言しても「まあまあ、やっといた方がいいから」としつこく食い下がり、こちらの言うことをききません。
問題を難しくするのは、良心的な大工さんが連れてきたことに加え、こうした連中とも日々一緒に作業し、お茶を飲み会話をしているため、良心的な申し出に対して断るような雰囲気になってしまうことです。
私の場合は仮住まいにしていたプレハブに風呂をつけられたことがありました。大工さんが使っていない風呂釜とボイラーを持っていると聞きつけた水道屋が「風呂釜もボイラーもタダなんだから無いよりはあった方がいいじゃないか」と私の制止を振り切って勝手に取り付け、そしてしっかり高額な工事費を請求してきました。
「やるならやってもいいが、この件についてはタダでやってくれるのでしょうね。代金の請求はなしですよ。私は払いません」と第三者の前ではっきり言うことが必要です。
この水道屋「この棟梁(やってもらった大工さん)は絶対ぼったくりをしねえんだ」と笑って私の肩をたたいたのをよく覚えています。
また別件ですが、初めに依頼した内容から作業がどんどんずれてくることもありました。「やってみたらここのところはこう変更しなければできない」「初め思っていたより大変だったから工賃はもっと高くなる」こうした言葉が日々繰り返されるようになり、当初取った見積もりの意味がなくなりました。
このままではどれだけ高額な請求がくるかわからないと思った私は、契約を破棄し工事を途中でやめさせました。やったところまでを清算しましたが、傷口を広げる前に小さな痛手(といっても十分痛かったのですが)で済ますことができた適切な判断だったと今でも思っています。
-- 手抜き工事はやらないで --
次は友人(Aさんとします)の場合で、やはり東京から福島に移住した人の体験談です。
Aさんの仕事が忙しくなったので、就職の決まっていなかったAさんの甥を雇い入れることになり、職場に近いアパートを借りて甥を入居させました。
このアパートの風呂にはシャワーがついておらず、入居する際アパートの大家が何気なく「シャワーもつけるから」と言ったのです。夏になれば毎日風呂を沸かさなくともシャワーで済ませたいと思うのは当然で、Aさんの甥は大家に「シャワーをつけてほしい」と依頼しました。
甥はこの時、工事費を大家が払うのか、それとも自分が払うのか、その場合はいくらなのか確認していませんでした。
「たかがシャワーを付けるだけ、湯沸かし器なんか2〜3万のこと」と思ったら大きな間違いです。シャワーをつけただけで突きつけられた請求は19万8000円でした。ちなみにこのアパートの家賃は月3万円だそうです。
業者に工事を発注したのは大家です。ところがこの業者、大家とは仕事の付き合いのある仲ですのでシャワーをつけただけで20万も請求はできません。しかし、Aさんの甥にしてもわずか20歳の若者、仕事は始めたばかりで20万も持っていないのは明らかです。
そこでこの業者なんとAさん宛の請求書を切って甥に渡しました。「叔父に払ってもらえ」と。
甥にしてみれば請求書を叔父に渡すことができず、かといって支払いもできず、工事代金は未払いのまま宙に浮いた状況になりました。
そんなこととはつゆ知らず、工事が終わって数ヶ月経った頃にAさんは甥に聞きました。
「そういえば風呂のシャワーってついたの?」「つきましたけど〜」と甥から暗〜い返事。
「大家さんが払ってくれたの、それとも自分で払ったの?」「あの〜、それが、請求書はきたんですけどまだ払ってません」「まだ払ってない? いくらなの? ちょっと請求書見せてよ」と言って渡された請求書を見てAさんはひどく驚きました。請求書が自分宛に切られているではありませんか。目が点とはこのことでしょう。
早速Aさんはガス工事業者に出向き、極めて真っ当な主張をしました。
「請求書は発注した者宛てに出すものです。私はガス工事の発注をした覚えはありませんので請求書を受け取る立場にはありません」
しかもこの工事、実は手抜きでした。その後ガス漏れが発生したのです。
幸いガス爆発には至らなかったのですが、今頃Aさんの甥が20歳の短い人生を終えてあの世に旅立っていてもおかしくはありません。言語道断です。
--土地はタダでもらおうー
移住者が後悔することの多くは土地購入にまつわることかもしれません。
都市部と田舎では土地の価値観が全く異なりますが、そこに目をつけているのが一部の業者や地主で、彼らは都市での相場を引き合いに出し、その土地の安さを強調して売りつけようとします。
移住後いくら快適な生活が待っていても、初めに不当に高い土地をつかまされたと思ってしまったら、移住自体が失敗ということになりかねません。
私の住んでいるような山村部では土地の取引は一反部(300坪)が基本単位、それが常識です。そうした中で、1坪数万単位の話が持ちかけられたらまずおかしいと思わなくてはなりません。
空家を探していくつかの業者と交渉した時、おもしろいことに気付きました。家を探しているのに土地を紹介されることが多々あって、それが高額な場合、みんな必ずといっていいほど語尾に「いいよ」をつけるのです。「ここ安くしとくよ、1坪3万円でいいよ」といった具合に。
地元の方々と仲良くなれば、運がよければ200〜300坪の土地ならただでもらえることもあります。タダとまではいかなくとも一反部10万、20万で譲ってもらえることは十分にあり得ます。
土地神話は過去の話、バブルの時代の話です。
今後日本の人口は減少を続けます。田舎から都市部への人口流出は続き、山村部では過疎化が進行します。田舎の土地は余り、その価値は下がり続けるのです。土地に多額の投資をする時代ではありません。
なお、私の住んでいる那倉区の人が私たちに高額すぎる請求をしたことは一度もありません。念のため。
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