ありのままの田舎暮らし
第7話 夢に向かう力
大豆を植える
いろいろ失敗を経験しながらも、なんとか地元の企業として軌道に乗り始めた矢先、突然原料の大豆が高騰し始めました。それまでの価格から一挙に3倍近い値段に跳ね上がってしまったのです。
大豆だけではありません。トウモロコシも上がり、当初計画していた原価計算がまったく合わなくなってしまいました。
ご記憶にあるかもしれませんが、中国が大量に買い付けたのが原因だとか、アメリカがバイオエタノール生産を始めたのが原因だとか、さまざまな報道が飛び交いました。原油価格も高騰し、工房で毎日使うボイラーのガス料金も上がり続けました。
ゆば工房でも原料の大豆を購入してきたわけですが、なんとか原材料費を抑えなければならないという思いから、近所の農家に畑を借りて自分で大豆を蒔いてみることにしたのです。大豆なら作ってやるよ、という友人にも作付を頼みました。
僕が借りた畑は30アールほどでしょうか。友人に頼んで耕してもらい、豆撒き機を購入して種豆を蒔きました。有機とまではいかないまでも、無農薬にしたいと思い、除草剤は一切使いませんでした。
忙しいので畑仕事を優先するわけにもいかず、かなり放置していましたが大豆はよく育ちました。
その夏は毎日枝豆を食べ放題。畑から1〜2束引っこ抜いて、収穫仕立てを茹でるのですから美味しいはずです。こんなのスーパーじゃ手に入らない!というくらい豆は美味しかったですね。
<写真>夏に収穫した大豆。品種はエンレイ。枝豆で食べると本当に美味しい。
刈り取りを考えていなかった
ところが、秋になって収穫が近づくにつれて、だんだん憂鬱になってきました。豆はぱんぱんに実が入り、だんだん乾いてきています。聞くと、収穫のタイミングを逃すと、風でサヤが弾けてしまい、みんな畑に撒かれてしまうことになるというのです。
自分で蒔いた種は刈り取らねばならない。当然ですが、僕は収穫のことなど深く考えずに大豆を始めてしまったのです。
収穫には、手で刈る覚悟がないならコンバインが必要ですが、知り合いを通じてなんとかバインダーと脱穀機を借りることができました。
ところがロクに草取りをしていなかったため雑草が伸び放題。仕方なく雑草ごとバインダーで大豆を刈り取り、その雑草と大豆の束を人力でブルーシートに集めてまわり、軽トラに積んで何度も脱穀機に運ぶという作業を繰り返しました。
<写真>バインダーでの刈り取り作業。あまりの雑草に閉口した。勤勉な人にしか農業はできないと痛感。
脱穀機はトラクターの動力とジョイントする必要上から、トラクターを持つ友人のペンションの裏手に設置したため、畑からはかなり離れていました。
ようやく一日がかりで収穫した大豆(と雑草)を運び終え、脱穀を開始したのですが、今度は脱穀機に雑草が詰まってばかり。しかも、農薬を使わなかったため、半分の豆は赤豆(紫斑病)という始末だったのです。
<写真>脱穀。僕の性格が雑なので、雑草ごと刈り取った。これで脱穀機を詰まらせてしまう。
それだけじゃありません。収穫した豆は乾燥が必要ですし、保管倉庫も必要です。温度・湿度管理など、とてもシロウトの手に負えるものではなかったのです。
しかしそれも、ひとつひとつ、アドバイスしてくれる方が現れ、なんとか乗り切ることができました。
無謀な挑戦でしたが、これがひとつの実を結ぶことにつながります。ウチの畑で撒いてやるよ、という農家の方々と知り合うことになるのです。
それが現在の「大豆の会」となり、西郷ゆば工房の原料大豆を作っていただいています。
<写真>ようやく収穫した大豆。しかし半分以上が紫斑病。がっかりした。
つづく
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