ありのままの田舎暮らし
第8話 都会人と田舎人
発想の転換を
ようやくゆば工房も軌道に乗り始めた矢先に、大豆や燃料が高騰し始めたため、近隣の農家に大豆を栽培してもらい、直接買い付けるという「大豆の会」を発足したのは、まさに苦肉の策でした。
いろいろ考えた挙げ句、それなら地元で作ってもらおう、という発想に辿り着いたわけですが、考えてみると「西郷ゆば工房」ですから、西郷産の大豆を使うことには地産地消という意味でも大きな意義があるわけです。
また、僕の望む豆を作ってもらえることも、多大なメリットがありました。
低農薬で健康的な材料を使いたいですし、ゆくゆくは無農薬有機を目指したい。地元・西郷の豆乳とゆばを作り、これからニーズがますます高まっていくだろう健康志向にも応えられる商品性を獲得していける。
ある意味で、これは僕の妄想だったわけですが、結果を考えずに行動してしまう僕は、地元の農家やさまざまな人を巻き込んで「大豆の会」を始めてしまいました。すると数軒の農家が参加してくれて、名実ともに西郷ゆばへの道を歩くことになったのです。
ただ、秋の収穫期になると、僕の少ない資金ですべての豆を買いとらなければならず、いっぺんにお金が出ていくのが頭が痛い。またそれらの豆は原材料ですから在庫扱いとなり、課税対象でもあるわけです。
もちろん、製品として売れていけば回収できるわけですが、1年かかる話です。
大豆の会を広げたいのですが、大きくなればなるほど、買い取り量も増えてしまうジレンマを抱えました。
<写真>大豆の会が栽培してくれている畑。実もしっかりと付いて枝豆で食べるとほんとうに美味しい。
不思議と集まる期待
そんなふうに僕の西郷ゆば工房は悪戦苦闘の連続です。失敗もたくさんありますし、周囲の人々にもたくさんご迷惑をおかけしています。
ところが不思議なもので、福島のテレビや雑誌などから取材を受けたりすることが多くなったのです。
また、地元の観光会社や役場とも関係が生まれ、市内・村内のイベントなどに出店要請が来たり、地域の産業振興といった会議の席にもお呼びがかかるようになりました。
僕は、自分のビジネスで悪戦苦闘しているだけなのですが、周囲は面白がって(奇異の目?)いるのか、何か良いアイデアはないかと期待されたりしはじめました。
<写真>09年初夏にオープンした「下郷道の駅」から、西郷ゆば工房販売コーナーの出店依頼がきた。隣村だが、下郷特産のエゴマを使った「荏胡麻豆腐」を新開発して協力体制を敷いた。
こうした会議の席に参加してみると、やはり田舎ならではのしがらみが存在するのがよくわかります。
有力者をあてにしたり、あるべき論に終始したり。実際に成功させるためには何をしなければならないかという具体論がなく、また、それは誰がやるのかというときに、結局自分が汗をかく気がなかったり。そして、「あんなんじゃダメだ」と他者批判も。
僕が言うのもなんですが、アイデアは実行しなければ成功も失敗もできません。自分でやってみることが大切です。
また、自分がやるという前提でないと、本当に有効なアイデアは出てこないものです。
僕のそういう考え方は、ひょっとしたら、いままで村になかった「外の風」のようなものに映っているのかもしれませんね。
田舎への移住には、郷にいれば郷に従え、も大切です。しかし、都会で経験してきた発想力や観察眼、具体化するスキルをお持ちなら、堂々とトライしたほうがいいでしょう。
実は、田舎はそうした人材の登場に期待してもいるのだと思います。
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