ありのままの田舎暮らし
第3話 初出荷
初出荷
初出荷は9月1日。市場に出すほどの量が確保できなかったので、いろいろな品種を合わせて200本ほどを、村のイベントで直売した。半日で完売しホッとする。
市場出荷は9月下旬からだが、1回にせいぜい5ケース(50本入り)ほどだったので首都圏は避けて地元の地方市場(いわき)を選んだ。
幸い市場での評価は高く、目標の平均単価100円/1本を維持できた。
ハウスの規模拡大は2〜3年後と思っていたが、これだけ安定した評価を得られるならと、翌年には300坪を増加できないか検討を始めた。
不思議なことに今まで渋っていた農協が、ほんの数ヶ月の出荷しかないのに"実績"があるからと農業近代化資金の融資に応じてくれた。この資金は利子は付くが農業信用協会の保証が使えるため連帯保証人で苦労することはない。
また、当時は(今もあるかどうかは不明)福島県独自の利子補給制度があり、実質的には無利子となった。
問題は農業信用協会の審査に通るかどうかだが、"実績"があるということですんなり通った。
あれほど苦労した資金の問題が1ヶ月足らずでクリアされ、640万円(据え置き2年間、後4年返済)の融資を受ける。
平成9年4月、2期工事開始。
雪の重みで曲がったトラスや支柱の補修・増設は業者に任せたが、ほとんど一人で屋根張り、カーテン張り、ベンチ増設工事などを行い、6月に定植にこぎつけた。
少しでも多く自分の足で歩く
都市生活者の中には、さまざまな理由で田舎暮らしにあこがれ、一部はいわゆるIターン就農をする。
理由はどうあれ、まさか"晴耕雨読"が実際にできると考えている人はいまい。就業人口が確実に減っている業種に参入しようというのだから、それなりの覚悟はあろうと思うが、実際にやってみなければわからないところも多い。
私の場合、バラ切り花養液耕周年栽培という作型であることと、病気の妻を抱えていたという事情からできるだけハウス施設の自動化を目指した。
ところが業者の「オススメ」通りにシステムを導入するとそれだけで何百万もかかってしまう。
環境センサーや天窓、サイドビニル、換気扇などの自動開閉装置はいずれゆとりができてからと諦めて、最低限必要な加温設備、自動給液装置のみ設置した(屋根フィルム、保温カーテン、遮光カーテン等はもちろん新品だが、栽培ベンチは廃棄されていたアングルを切って自作)。
また、軽トラックや草刈り機その他の機械、事務机、応接用具などはできるだけ「もらう」か「拾う」かをモットーとした(たとえば軽トラックは酒2升で、草刈り機酒1升、動噴ビール1ケースで譲ってもらい、机は拾い、椅子は切り株で自作など)。
現在はどうかわからないが、以前新規就農ガイドセンターに相談したときの初期投資予想額は600坪経営で約4500万円(ハウス新築の場合)。私の場合は1200万円(中古ハウス利用)。
条件や運にもよるが、ネクタイをして机の前で仕事をしている人の話を聞くより、少しでも多く現地を自分の足で歩き、受け入れてくれる側に立った考え方にふれた方が良い結果を生むように思う。
資金より必要なものは
体力や石にかじりついてもという根性がなければ農業の新規参入はお奨めできないが、金は無ければ無いなりになんとかなる。
なければ難しいのは中長期的ビジョンだろう。
初期投資額が比較的小さくてすむのは露地野菜栽培(慣行農法で)だろうが、まず自家菜園程度の規模で野菜作りを覚えてからくらいの考えならやめた方がよい。趣味の日曜大工が本物の大工になったという話はあまり聞かない。
また、様々な新規参入(就農)事例集の類が出版され、私も何度か取り上げられたことがあるが、成功事例の陰に失敗事例も多いということを忘れてはいけない。
わが平田村には、私が参入した後7世帯が新規参入したが、うち2件は離農、1件はそれに近い状態である(ちなみに、離農した2件のうち1件は、私と同様平田村農業活性化資金を借りたが、返済しないで離農・転出したため、新規就農者に対する貸し付け要件は厳しくなり、迷惑している)。
成功事例通りやったからといって必ず成功するとは限らないが、失敗事例通りやればまず失敗するだろう。その意味で難しいかもしれないが失敗事例集を作れば参考になるかもしれない。
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