ありのままの田舎暮らし

2009.12.03

第4話 経営形態の変更

あぶくまローズ
道の駅ひらた」 高野 哲也

P1010063.jpg 言うまでもないことだが、資本主義経済のもとでは、商品の価格は基本的には需要と供給のバランスで決まる。
 一面合理的なシステムではあるが、他方で優勝劣敗、弱肉強食の原理に支配され、ただ作るだけの農家にとっては厳しい面もある。(人間の食料を生産するという、経済的側面だけで論じられない部分は置いて考えた場合)

 農業者といえどもメーカーである。メーカーである以上は、"作る"ことにエネルギーをかけるのは当たり前の話であるが、機械でも化粧品でも、およそメーカーならばそれと同等かあるいはそれ以上に"売る"ことにエネルギーやコストをかけるだろう。
 しかしながら当時私の周辺には"売る"ことにエネルギーをかけている農家は見あたらなかった。多くは市場や農協に販売を委託し、出したら出しっぱなし。


 市況がそこそこの時はともかく、悪くなると、やれ「安くってだめだ」やれ「農協が高く売ってくんね」と文句は一人前で、私が販売戦略を聞いてみるとそのようなものはまず持っていない。これでは経営者としては失格だろう。

私の場合はどうか。
 偉そうなことを書いているが、経営を始めた当初は金額ベースで90%が市場出荷。もともと、切り花は少量多品目経営が難しいため産直の割合が少ないのだが、私もそれで経営が成り立つならば良いと思っていた。

 経営形態の変更を考え始めたのは経営開始1年半後。原因は輸入物攻勢である。
 それまでもインド等から入ってはいたが、切り花長も短く、品質も高い水準とは言えなかったので脅威とならなかった。
 ところが高品質の韓国産が、そしてエクアドル、コロンビア、ケニアなどから、かなり品質の高いバラが安価に入ってくる。こちらもコストダウンに努めるが、それでも限界がある。

 我が国では欧米のように花を日常的に飾る習慣が未発達で、特にバラはギフト需要が中心。3月の送別会、卒業シーズン、母の日などのいわゆる"もの日"とそうでないときの市況の波が大きく、市場頼みでは苦しい。工業製品のように生産調整がきかないため、"もの日"直後の非需要期に大量に出荷せざるを得ないときは悲惨である。



 参考のために記すが、私の最低記録は、白バラ1本単価3円、1ケース50本入り157円、経費は市場手数料15円、箱代が126円、運賃が105円でもちろん大赤字である。
 同じ規格品が前週95円で売れていたのだから、その差は需要と供給以外考えられない。
 キャベツならトラクターで踏みつぶせば一人で処理できるが、ベンチ式の切り花栽培ではとにかく切るしかない。人を使って捨てるために切る。この辛さ、切なさはやった者でないとわからない。

 販売戦略の見直しが必要なことは言うまでもないが、具体策を見つけるのが大変である。下手な戦略を立てれば経営体力がないだけにすぐに潰れてしまう。文字通り生活がかかっている(その点、米、野菜を自給している在来農家はやや有利か)。
 同じ品目を作っている農家が近隣にあれば、グループを作ってブランド化する戦略も考えられるが、平田村内はもちろんのこと、近くにはバラ農家がない。

 結局付加価値をつけて販売する方法を考えるしかないのだが、いろいろと思い悩んだ末出した結論が、結婚式場との契約販売だった。



 式場での販売は、農産物につく付加価値としては相当高い方だと思うが、その分ハードルも高い。メインテーブル、卓上装花、ブーケ、花束などを作る技術、式場への営業、他店との競争、バラ以外の花材の仕入など、本当にできるのかという不安はあったが、農家が結婚式まで手がけるという話はあまり聞いたことが無く、ならばやってみようという冒険心の方が強かった。

 "I have a dream."の演説で有名なM・L・キングjr.牧師はこうも言っている。
「失敗したくなければ何もしなければよい」

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