ありのままの田舎暮らし

2009.12.17

第5話 結婚式場との契約販売

あぶくまローズ
道の駅ひらた」 高野 哲也


 新たに農業に参入しようという人にとって、資金計画は経営の成否を左右する大きな要素である。ゆめゆめ安易な計画(自分に都合のいい計画)を立てないよう助言したい。
 以前書いたことだが、参考になるかどうか改めて私の場合を記す。
 平成8年から12年までの5カ年間で500万円(平田村農業活性化基金)、平成9年から14年までの6カ年で640万円(農業近代化資金、ただし、最初の2年間は据え置きなので実質的には160万円×4年)の借り入れである。

 おそらく平成13年には、屋根ビニル、サイドビニル張り替え更新で100万近い資金が必要になるだろうとの予測からこのようになったのだが、平田村農業活性化基金と農業近代化資金の返済が重なる11年、12年がきついのは一目瞭然で、月25万の積み立てを課せられる。
 当初計画では月平均売上げが70万円の目算だったのでなんとかなるはずだったが、前回書いた輸入攻勢にさらされた結果50万台にまで落ち込み、大変厳しい状況になった。


takujou.JPG 専業農家を目指してはいたのだが、やむなく生活費の足しにと、家庭教師のアルバイトを始めた。
 特に平成11年、12年は週6日をあて、内4日は19:00~21:30に1件、22:00~24:00に1件というスケジュールをこなしていた。
 月、水、金は開市日なので、週3日は朝4時には起きるので、さすがにこたえたが、月15万ほどの収入が確保でき、生活費のめどはついた。前述した経営方針の転換の背景にはこのような事情があった。

 結婚式場と契約販売していると聞くと、大概の人は花のみを納品し、アレンジは別の花屋が作ると思うようだ。私が花束は勿論、メインテーブル、卓上、ブーケ・ブトニア、リストレットなどまでやるというと驚く。
 「実は小学校時代から図工が得意で」と言うと、冗談だと思われるのだが事実である。



 アレンジの技術はほとんどが本からの独学である。幸い花材は捨てるほどあるので、とにかく数をこなした。
 また、埼玉にいた頃知り合ったフラワーデザイナーがちょくちょく遊びに来てくれたので、その都度教えを請い、なんとか売り物になるようなものが少しずつできてくる。

 むしろ大変だったのは式場への営業活動で、思っていた以上に難関だった。 
 花屋が入っていない(契約していない)式場があるはずがなく、たいした技術もない私は、わずかな見本(実物と写真)ととびきりの笑顔(冗談でなく)のみで飛び込み営業をする。
 ようやく1件取れたのは方向転換を考えてから3年経ってからだった(それまで、持ち込み依頼で年間5本程度の依頼はあったが)。

 かくして年間約20~30本の結婚式を手がけられるようになり、約400~500万円の売上げは確保する。その後さらに1件の式場契約に成功したので、年間50~60本をこなせるようになり、経営が安定する。 

 無論良いことばかりではない。
 葬儀の装花と違い、ブライダル装花は十人十色で、極端に言えば100組のカップルがいれば100通りのバリエーションがあり得る。



婚礼展示会で出したサンプル通りに注文が来ることはあまり無く、ゼクシーなどの情報誌を持ってきて、こんな風に作ってくれと言われると、仕入が多くなり利益率が下がる。
 強みは、自ら栽培していることで原価率が競合花屋より極端に低いことだけだから、仕入が多くなると他店と同じになってしまうのである。


takasago.JPG 経験を重ねるうち、良い意味での要領を覚えてきて仕入割合を下げられるようになったが、初期は結婚式1本で、売上げ28万、仕入18万などということもあり、人件費その他経費を引くとほとんど利益が出ないということもあった。
 もっとも、式が終わった後で新郎新婦からお礼の手紙や新婚旅行先のみやげなどをもらうと、しみじみやってよかったと思う。市場に出していたのではわからない、エンドユーザーとの直接取引による手応えであろう。
 世は直売所ブームだが、これも一種の直売か。
 販売チャンネルが増えることは、必ずしも増収をもたらすわけではないが、自分の場合は(少なくとも今日までは)正しい選択だったと思う。

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