ありのままの田舎暮らし

2010.01.18

第7話 ひらた高原朝採り野菜の会運営コンセプト

あぶくまローズ
道の駅ひらた」 高野 哲也


 ひらた高原朝採り野菜の会(以後「朝採り会」と称する)の納品形式は「全量買上方式」であった。
 バイヤーと私が毎週金曜日に翌週1週間分の出荷量、買上単価を決め、市況の変動があっても該当週中は単価を変えない。
 また、生産者が再生産に取り組める最低単価を決めて、市況が極端に下がってもそれ以下には下げないこと。また反対に天候不順等で市況が極端に上がっても、販売単価を極端には上げないことなどを含む。
 できたばかりのこの組織には、一応参加してうまくいきそうなら継続しようという考えの人もいただろうし、技術も経験もない新規就農者である私を信用していない人もいただろう。理想は大事だが、何より必要なものは求心力であると考えた。

 経済活動として行う事業である以上、大手量販店と渡り合い、言いなりにならない姿勢や、実利をもたらすかどうかは重要である。


 また、作った野菜を近所にあげて回るだけで、販売した経験が無いというバッパもおり、適正な価格で売る(「売れる」ではなく)喜びを経験させることは不可欠であろう。
 生産したバラを、捨てるために切るつらさを味わわせないよう、野菜農家が安心して生産できる体制が必要と考えた。

P1000800.jpg 販売のコンセプトは、とにかく鮮度と安全性、食味にこだわること。
 "朝採り"を会名に含む以上、前日収穫は厳禁(カボチャやジャガイモ等は除く)。雨天で葉物野菜がドロドロになりそうなときは、前日午後0時の天気予報で、降水確率50%以上の時のみ前日収穫を許可するという取り決めを作った。

 原則として無農薬で、多少見栄えが悪くても「安心・安全」を謳う。畜産がさかんな地の利を生かし、有機質肥料を多用して食味の向上をめざす。

 会員の使っていない倉庫(約30坪)を借り受け、机・椅子等の事務用品を、やはり"もらうか拾うか"で集め、集荷所兼事務所の体裁を整える。



コピー機はさすがに拾えなく、だれもくれなかったので、役場に出向いて必要な納品伝票類をコピーさせてもらった。

 朝採りが基本なので、集出荷は午前9:30まで。車の運転ができないバッパも多かったので方部役員による集荷体制を作った。
 9:30から10:30まで仕分け、出荷業務にあたったが、初期は手際が悪く11時ごろまでかかることも少なくなく、店から苦情が来ることもあった。

 また、「安心・安全」のために農薬使用を原則禁止したため、商品の見た目はあまりよくない。作る側としては、無農薬なら多少の虫食いは当たり前だが、買う側としてはそうではない。
 よく言われるように、やはり見た目も商品力であり、いくら「安心・安全」のため農薬を使っていませんと謳っても、有機野菜の認証でも取っていればともかく、一般消費者向けには厳しいものがあった。
 販売店との協議の結果、最低限の農薬は使うことに路線変更せざるを得なかった。

 また、できるだけ化学肥料に頼らず、有機質肥料を使うように指導したが、この地域は畜産がさかんなので自然と循環型農業ができておりその意味では苦労がなかった。



 むしろ、堆厩肥の無計画施用によるチッソ分過多が懸念され、土壌分析をすると果たして土壌バランスがくずれている圃場が多かった。
 このような圃場では施肥設計から指導が必要であるが、何十年も農業を続けている農家が肝心の土作りに意外と関心が低いことに驚かされる。
 また、栽培技術もそれほど高度とは言えない農家が多く、農業普及所に依頼して、定期的な勉強会を企画した。


量販店との協働関係 

 各店舗の青果売り場に朝採り会コーナーを設けて、"朝採り地場野菜"として一日売り切り販売をするというのは、量販店としても初めての試みだったらしく、試行錯誤を重ね、協議をしながらの運営だった。
 売り切りとはいっても、毎日完全に売れるとは限らない。私は、午後6時を過ぎたら、売れ残り品は半額処分するよう要望していたが、店の中には利益が欲しくてそれをやりたがらない所もある。
 うっかりすると翌日、当日商品が入荷するまで店頭に並べられることもあるが、各商品には会名と生産者の名前入りのシールが貼ってある。
 お客様から「これ本当に朝採りかい?」と聞かれたとき「昨日の朝採りです」と答えなければいけないのは、店にとっても我々にとってもマイナスであろう。



 軌道に乗るまでは多くの利益は期待できないだろうが、目先のわずかな利益にとらわれず、まずは客の信用を得られるような仕事を、作り手も売り手も考えるべきである。

 販促活動も重要である。POPは販売店規格があるので店に任せたが、会員の集合写真を引き伸ばした大型POPをコーナーに飾り、定期的に販売店を回り、餅つき大会や野菜の試食販売を行い消費者の反応を見る。
 地方でも少子高齢化が進み、白菜やカボチャの1個売りが苦戦すると、半切り、4分の1切りあるいはミニ白菜の試験栽培をする。
 変わった野菜はレシピをつけるなど、思いつき、すぐに取り組めることは概ねできたと思う。
 "野菜離れ"といわれて久しいが、レトルトや冷凍野菜は売れているのだから、実態は"料理離れ"であろう。平田産のうまい高原野菜を使った料理教室をやってみたいが未だ果たせずにいる。

 朝採り会からは、売上げの3%が事務局長報酬として支払われる。ただし、量販店との電話代、苦情処理のためのガソリン代やらも込みなので、実質的にはボランティアに近い。
 1年目の平成13年は、11月末までで約1300万円の売上げがあり、出だしは好調といえようが、この仕事に取り組み初めてから本業がだいぶおろそかになり、バラの出荷量は漸減してきた。



 結婚式場の方が比較的安定していたため大勢に影響はないのだが、早く軌道に乗せ、誰かに替わってもらわないと大変だと思いつつ平成13年はあっという間に暮れていった。

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