ありのままの田舎暮らし

2010.02.26

第9話 「豊かなむらづくり顕彰」受賞

あぶくまローズ
道の駅ひらた」 高野 哲也

問題と対処

takano.jpg 早急に解決しなければいけない問題は二つ。
 一つ目は、会員の増加が思わぬ事態を招いたこと。
 特定の品目が特定の時期に集中しないように、1月中に生産計画表を作らせ、2月中に品種検討会、種子販売会を量販店のバイヤー同席のもとで行ってきた。そのため、既存会員の作型はできるだけ分散させられたのだが、新規会員で年度当初の生産計画に加わっていない人の生産物は、どうしても作りやすい品目、昔から作っている品目に偏る傾向がある。



 結果として、7月、8月の2ヶ月間、インゲン、キュウリが生産過剰となり量販店との価格交渉に支障が出てきた。品目が多種にわたれば出荷店舗の増加で対応できるが、2品目だけでは平田村コーナーの維持ができない。
 解決策としてかけた営業先は、取引先量販店に入っている惣菜メーカー。夏場の弁当やカッパ巻き原材料としてどうかというもので、またしてもとびきりの笑顔で乗り込む。

 幸いムクダイ農法で作っているならということで採用してもらえることになり、むしろ生産量が不足するほどの受注を得ることができた。
 また、郡山のイタリアンレストラン、東京の野菜料理のレストランに、あるツテを使ってかけた営業が成功し、量は多くはなかったが、余剰分を売ることができた。

 二つ目はライバルの出現である。
 とはいっても同じ地域での競争相手ということではない。
 量販店側は、我々のような農家組織の地場野菜が消費者に好評ということや、県をあげての地産地消キャンペーンに乗る形で、各拠点ごとに市場仲卸を帳合とする農家組織(もどき)を作り始めた。ただし、我々のような全量買取方式では量販店側のリスクが大きすぎるため、「売上げ納品方式」を進めてきたのである。




 これは、価格の決定権や出荷量の決定権は農家が持つが、売れた分の80%だけお支払いし、売れなかった分は廃棄しますよという方式で、いわば量販店の中に直売所があるようなものである。 ちょうど全国的に直売所が脚光を浴びつつあったときで、量販店としても危機感を持っていただろうと察するが、この方式を、我々が地盤としている地域にも広げようとしてきたのである。

 我々は主にいわき地区を販売先としており、この地域は農家の組織化が極めて遅れていたので、量販店における出荷元シェアの65%を占めていた我々には直接影響は出なかったが、量販店の経営戦略が変わらない限り、いずれは売上げ納品方式に変えざるをえないであろう。そのときのために生産者の意識を変えていかねばらない。売上げ納品方式に慣れた生産者組織がライバルとして現れたときのために。

 ちょうど平成21年に、平田村を横断する国道49導線に道の駅が建設されることになっており、その準備として村が仮設直売所を運営することになり、本会にも出荷要請があったので、そちらにも出荷することで売上げ納品方式の練習をさせることにした。  


 「豊かなむらづくり顕彰」受賞

 思いがけないことが起きた。地方新聞社が行っている顕彰事業"豊かなむらづくり顕彰"の平成19年度団体部門に選ばれたというのである。
 我々は農家が自らの手で販路を開き、再生産可能な持続的農業を目指して活動していただけで、わずか6年ほどの実績で賞をいただけようとは思っていなかったし、何よりこの会がいまだ発展途上で、数々の問題点をはらんでいることは誰より私が一番よく知っている。

 辞退することも考えたが、会員のバッパ、ジッチ達が無邪気に喜んでいる姿を見ると「やってて良かったな」と素直に思えたし、「賞をもらっちゃったんだから、それに恥じないよう、今まで以上にいいもの作らなんねえだぞ」と戒めたにもかかわらず、受賞祝賀会の段取りまで考えようという喜び様はなんとも微笑ましく、この際あまり固いことは言わず、くれるものはもらっておくことにする。
 授賞式当日、県知事から表彰状をもらったときのバッパ、ジッチらの顔は忘れられない。

 この会は民間の任意団体で、企画・運営に関して行政の支援は原則的にもらわないことを前提としている。
 補助金はのどから手が出るほど欲しいが、メリットよりデメリットの方が大きい場合もある。



 デメリットの最たるものがコスト感覚の欠落を助長することで、意識を高く持たないと原価計算という概念が身に付かず、「このトマト1個つくるのにどれくらい経費かかってんだい?」という質問に「わがんね」と答えることになる。

 どんな産業・業種でもどんぶり勘定では経営は成り立たないだろうが、農業でも同じこと。
 補助金を与えて機械やハウスを買わせたり、基盤整備事業をやらせたりする手法は農業振興に逆行する場合もある。補助金は"両刃の剣"である。

 付加価値をつけること、コスト意識や経営感覚を養うことなどを伴って初めて生きてくる。我々の祖先は、ろくな機械も補助金もたいしてない中で土にまみれてきた。わずかの補助金で大切な農魂を失ってなるまい。

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